オオクワガタの飼育 : 産卵と幼虫飼育・繁殖に必要な知識と技術

 

オオクワガタ

オオクワガタ

重量感あふれる漆黒の分厚いボディ、大顎は太く、1本の張り出した内歯、挟む力も非常に強いオオクワガタ。まさに日本のクワガタの中の王様です。

 

昔は国産オオクワガタの飼育・繁殖は難しく、特に大型の個体を育て上げるのは熟練の経験と観察眼が必要であるといわれてきました。それが2000年代に入り菌糸ビンでの幼虫飼育がメジャーとなってからは70mmオーバーの大歯型の個体を普通の家庭でも羽化させることが容易になっています。

 

それに伴って国産オオクワガタの販売価格が下がってきて、今では数千円を出せば入手できる時代になっています。今回の記事では、比較的安価で入手でき、丈夫で長生き・飼育の入門種とも言われているオオクワガタの自己流の飼育・繁殖方法紹介します。

 

オオクワガタの入手方法

オオクワガタを入手するには販売店で購入するか自分で採集するかの2つの選択肢があります。オオクワガタの採集は、ある程度の知識・ポイント選定能力・時間と運が必要になり、採集できる保証もないので初心者の方は避けた方が良いかもしれません。したがって、初めは飼育品を販売店で購入することが最も確実な方法です。

 

オオクワガタの成虫・幼虫はクワガタ・カブトムシ専門店やペットショップ・地域によってはホームセンターでも販売されています。また、各ショップがHPを運営しているのでそこからインターネットで通販での購入も可能です。

 

ここでは成虫ペアからの飼育と仮定して説明していきます。野外採集品か飼育品のどちらかを選ぶことになりますが、私は国産オオクワガタの飼育に関しては全力で飼育品(ブリード物)の購入をお勧めします。理由は羽化した時期が分かっていること・産卵済みでないことの他に、ブリーダーによって累代飼育されてきた血統というものがあるからです。

 

能勢YG血統や久留米などの過去にオオクワガタのギネスを獲得した実績がある血統物の個体を温度管理して飼育すれば、昔は夢のようだった80mmの壁を簡単に超えることができてしまいます。ギネスを狙ってオオクワガタ専門で飼育しているブリーダーの方はこの血統物の個体を数多く飼育しています。能勢YG血統や久留米血統の成虫の値段は、サイズが90mmに迫るギネス級の個体は数十万円もしますがその兄弟個体やその個体の子孫であれば安いものだと1万円あれば入手可能な場合があります。

 

オオクワガタに必要な飼育用品

飼育ケース

飼育容器は可能であれば大きめのケースが望ましいです。雄でプラケース小、雌でプラケースミニもあれば十分な広さだと思います。基本的に普段は雄と雌を離して飼育します。

オススメの飼育容器はシーラケース製のコバエシャッターという飼育容器です。従来の飼育ケースと違って、ふたの部分に無駄な穴が開いていないため、コバエの侵入をシャットアウトすることが可能で、保湿効果も抜群です。また、クワガタが顎を挟んでとれなくなってしまう事故が防げます。

 

ちなみに私は飼育数が多いのでスペースの都合上、雌はクリアボトルの800ccで管理しています。

 

オオクワガタの餌(ゼリーなど)

ペットショップやホームセンターなどでクワガタ・カブトムシの餌として、昆虫ゼリーが販売されています。フィルムをはがすだけですぐに与えることができるのでゼリーを与えるのがお手軽です。

昆虫ゼリー以外ではバナナなどの果物を与えることも可能ですが、腐敗が早くコバエも湧きやすいので常用はしておらず、ゼリーが切れてしまった時だけにしています。

時期によっては果物の値段が高騰しますし、昆虫ゼリーは製造メーカーがクワガタ、カブトムシなどの昆虫が必要とする栄養について考えて作っているため最適だといえるかもしれません。

 

与えた餌をすべて食べきったら新しい餌を入れます。食べずにいた場合は、カビが生えたり、汚れが目立ってきたら交換するようにします。餌を食べすぎてしまうということは無いので、多少多めに入れるくらいがちょうどよいです。

 

マット

マットとは、ケースに敷く飼育用の床材のことです。クワガタ・カブトムシ専門店やホームセンターなどで販売されています。成虫の飼育のみで、産卵~繁殖が目的でないのであれば、こだわる必要はありません。マット以外にもハスクチップや園芸用のミズゴケも利用可能です。

私は爬虫類も飼育しているので成虫管理にはハスクチップを主に使用しています。足りなくなったときには1次発酵マットと呼ばれる発酵が浅いマットか針葉樹マットを敷いています。マットは成虫が潜って隠れることができるくらいの厚み(2-3cm程度)にしています。厚く敷きすぎると雄がフタに顎を挟んだり、脱走される危険性が高まってしまいます。

 

餌皿

入れても入れなくてもいいと思いますが、私はなるべく入れるようにしています。

餌皿の役割は餌(ゼリー)がマットの上にこぼれ落ちないようにするための役割を果たします。食べるのが下手な個体は食い散らかしたりしてマットの汚れが激しくなり、そのたびに新たなものに交換してあげないといけなくなります。汚れ防止の他に転倒防止・成虫の隠れ家にもなります。

 

転倒防止材

カブトムシやクワガタは、足を引っ掛ける場所が無くて起き上がれないでいるとずっともがき続けてしまい、気が付かないで放置してしまうと弱って死んでしまいます。この転倒死を防ぐために足場になるものを入れてあげましょう。

転倒防止材として、産卵木の樹皮や木の枝、木の葉が販売されています。

霧吹き

オオクワガタは湿度がある環境に生息している昆虫です。乾燥条件で飼育していると符節が取れやすくなります。それを防ぐために霧吹きで定期的に飼育ケースの中を湿らせる必要があります。蒸れに弱いので湿度の与えすぎにも注意が必要です。

霧吹きでかける水は、水道水で大丈夫です。オオクワガタが死んだりしていませんし、普通に繁殖することもできているので全く問題ないといえると思います。心配な場合は水道水を数日前に汲み置きし、カルキ抜きした水を与えるとより安心できると思います。

 

オオクワガタの成虫の飼育

オオクワガタの飼育ケース

オオクワガタの飼育ケース

先に紹介した道具をこの画像のようにセットして、オオクワガタを飼育しています。転倒してもエサ皿と材片が設置されているので、自力で起き上がることが可能です。霧吹きの頻度は週に1回くらいです。マットの状態は手で軽く握って、ダマになり突くと崩れるくらいの湿度が理想です。

 

飼育ケースは、太陽の光が直接当たる場所には絶対に置かないようにします。オオクワガタいえど、太陽熱には敵いません。1日もしないうちに死亡してしまいます。家の外に置く場合は、雨で濡れるような場所は避けてください。厳密な温度管理をしない環境でオオクワガタを飼育するときは、靴箱の中や床下などに置くのがオススメです。

 

オオクワガタの交配

オオクワガタのなかまは羽化後最低でも6カ月以上経過している雌雄でないと交尾・産卵する可能性が低くなります。可能であれば、越冬したペアが望ましいです。国産オオクワガタの性質は温厚なので、十分に性成熟した雌雄を同じケースの中に入れて交配させます。雄が大顎で雌を挟み殺してしまう事故は滅多に起こりません。

 

交配期間の温度は25℃もあれば十分です。

温度管理ができない方は地域にもよりますが5月あたりからセットできると思います。

 

交尾をさせる1カ月ほど前からは、雌雄ともに昆虫専用の高タンパクゼリーを与えるようにします。特に雌には高栄養・高タンパクの餌を与えます。私は与えていませんが、カブトムシの蛹を餌として与える方もいます。

 

画像

 

私はこの画像のようにセットして、オオクワガタを交配させています。交配の期間はだいたい1週間程度設けています。長くなりすぎると雌が疲れてしまうのでそのくらいがちょうどよいと思います。

 

餌皿は雌雄の隠れ家になるのでほぼ必須と言ってもよいでしょう。使用するエサ皿は18gのゼリーを2個収めることができる大きめの物がよいと思います。餌皿をひっくり返したときに雌雄仲良く隠れていれば、交尾が成立している可能性が高いです。

 

ケースの開いたスペースには転倒防止材を置いておきます。

万が一雄が雌を攻撃してきた場合に隠れ家としても利用することができます。

 

交配用のケースはなるべく静かで暗い場所に置きます。灯りをつけるとワサワサ動き出してしまってストレスを与えてしまい、雌殺しや交尾失敗などのトラブルにつながります。私はできるだけ刺激を与えたくないので、ケースごと段ボール箱にいれて、4日に一度だけ確認するようにしています。

 

オオクワガタの産卵・産卵セット方法

交配が終わったら雌を単体で産卵セットに移します。オオクワガタの雌は朽木に産卵するので、産卵木が必要となります。クワガタムシの飼育用にシイタケ栽培をしたホダ木・オオヒラタケ菌やカワラタケ菌を植菌した産卵材が販売されていますので、それを購入して使用します。

 

まずはホダ木(クヌギ・コナラなど)の説明をします。

材の硬さは硬すぎず軟らかすぎない物を利用します。硬すぎる材は雌が産まなかったり、割り出しの時に非常に苦労するので可能な限り避けた方が良いです。柔らかすぎるものは削りますが産卵してくれない場合があります。

良質な産卵木の選び方は、切断面に爪を強く押し付けて爪痕が残るかどうかをみたり、手に持ってみて大きさの割に重いかどうかなどで判断します。慣れてこないと難しいので、注文するときに頼んでみると代わりに選んでくれる販売店もあります。

 

購入した産卵木は6時間ほど水につけて加水し、樹皮を剥いた後に水分を飛ばすために12時間程度風通しの良い日陰で干します。オオクワガタの雌には好みの材の水分量・硬さがありますが、雌によって好みが異なる場合があるので、産卵木は2.3本産卵セットに入れるようにします。

人工カワラ材

人工カワラ材

カワラ材は使う前に樹皮を剥ぐだけですぐに使えます。クヌギやコナラ材のように面倒な加水と水分調節がなく簡単に産卵セットを組むことができます。植菌されているのでホダ木より値段が高くなってしまいますが、便利なのでたまに使っています。

 

 

画像は私がいつも組んでいるオオクワガタの産卵セットです。産卵セットがオオクワガタ飼育においてブリーダーの個性が最も出るステージだと思います。レイアウトが人(目的)によって多少変わります。

 

中ケースよりも大きい飼育ケースか小型の衣装ケースに幼虫飼育用のマットを3cm程かために敷き詰めて、その上に加水したクヌギ・コナラなどの産卵木を設置します。その上から産卵木が動かないように数cmマットを加えます。ただ転がすだけよりも多少マットで抑えた方が産卵数が多かったので、我が家ではこのようにしています。

 

空いたスペースには高たんぱくのゼリーと転倒防止材を散らします。

ケースの保管場所は交配の時と同様に暗くて振動の少ない場所にします。動かしたりしただけで雌は産卵をやめてしまうので気になっても我慢します。餌の交換頻度は1週間に一度で、産卵中はゼリーを消費するスピードが速いので、多く入れるようにします。

 

私は2週間から3週間ほどしたら産卵セットから雌を取り出すようにしています。

 

産卵セットの割出(幼虫の取り出し)

 

オオクワガタの雌に産卵痕がつけられた朽木

オオクワガタの雌が産卵した朽木

産卵ケースに雌をいれてから1カ月ほど経過すると、産卵木は雌に齧られて穴だらけになります。そうなっていれば産卵している可能性が高いです。産卵セットからの幼虫の取り出しは、雌を取り出してから3週間から4週間経過したころが目安です。なれてくると産卵木の状態やケースの底に見られる幼虫の様子から、割出のタイミングを把握できるようになります。

 

事前に用意しておくものは、800ccの菌糸ビンまたは一時保管用の菌糸プリンカップ(マットでも可)、産卵木を割るための道具(マイナスドライバーやナタ)、スプーン、割り出し中の幼虫を整理するための小分けケースです。

 

取り出す幼虫はまだ非常に小さいため、傷をつけないように丁寧に作業します。オオクワガタは基本的には産卵木の中に卵を産み付けます。孵化した幼虫がマットに移動することがあるため、まずは敷いていたマットに幼虫が混じっていないか確認します。

 

産卵木はナタやマイナスドライバーなどで少しずつ表面を削るようにして細かくしていき、幼虫を取り出します。産卵木は手でも簡単に割れることもありますが、調子に乗って幼虫を潰しやすくなるので、やはりドライバーを使って慎重に割っていくことをお勧めします。

 

虫が木を食べると道のようなものができるのですが、それを食痕といいます。食痕の先に小さな幼虫がいることが多いので、それを発見したらより注意していく必要があります。幼虫を見つけて別の容器へうつすときは、雑菌対策のために素手で行わずにスプーンなどを使います。

 

飼育数と幼虫の状態を把握するために、一時的に仕切りのある小分け容器に幼虫を入れておきます。仮に傷つけてしまった幼虫からは体液が出てきますので分けておきます。傷つけてしまった幼虫は羽化まで育つ可能性が低いので、菌糸には入れず、マットで保管します。

 

用意していた菌糸ビン・プリンカップの数が足りなくなったら、取り出した産卵セットのマットと産卵木の材片はまた同じケースに戻して一時的に保管します。幼虫に与える餌が確保できたらなるべく早めに割り出すようにします。

 

※中にはドライバーでも歯が立たない位硬い産卵木があります。そのような時はマットに埋め戻して、柔らかくなった頃に割り出すのも一つの方法です。この方法をとった場合、菌糸ビンに入れるタイミングが遅くなるので私は無理やり割出専用の道具(アペックス・プロ)を使ってすぐに行うようにしています。

 

オオクワガタの幼虫飼育

オオクワガタの幼虫の育て方として、材飼育、マット飼育、菌床飼育の3つの方法があります。中でも菌床飼育の菌糸ビンでの飼育が最も大きく育ち、簡単です。さらに比較的安価で販売されており、通販でも入手可能なので多くの方が菌糸ビンで幼虫を飼育しています。ここでは菌糸ビンを使った幼虫の飼育方法を紹介します。

 

最初に入れるのは、3カ月後に交換することを考えると800ccの容量がオススメです。プリンカップなどの小さな容器でも構わないのですがオオクワガタの幼虫は自分がいる環境を把握するため、餌の質が悪かったり、量が少ないと感じたら親になるまでの期間を短くしたり大きくならないように自分で決めてしまいます。

そうなると大きな成虫に育てることができなくなるので極端に小さな容器は避けています。逆に大きすぎる容器は成長がよくなる3令幼虫の時期に合わせて交換するタイミングが合わなくなってしまいます。

 

2本目は雄は1400cc‐1600cc、雌は800ccのビンに入れます。雌は2本目の800ccでも問題なく羽化まで持っていくことができます。雄は800ccのビンだと手狭なので大きなものに移しています。菌糸の半分以上を食い尽くすか、3カ月経過したら3本目のビンに交換します。

 

3本目は2本目のものと同じ容量の菌糸ビンに移します。温度管理がある程度で来ている場合はこの3本目で成虫になります。温度管理していない場合でも羽化まで持って行けることもありますが、劣化がひどくなると4本目に交換する必要があります。

 

1本の菌糸ビンでも成虫にすることが可能ですが、羽化サイズが小さくなる傾向があります。ある程度の大きさで羽化させるためには2回から3回程度菌糸ビンの交換が必要です。夏から秋ごろにとれた幼虫は順調に生育していけば翌年の4月から6月頃には成虫になります。

 

羽化したあとの注意点

オオクワガタが蛹から羽化してきたら、できるだけ高温を避け20℃‐25℃程度で管理することが理想です。飼育ケースにマットを厚めに敷いて、その上にティッシュを2,3枚折りたたんで入れて管理します。ティッシュを入れることで転倒防止、ぼろぼろになってきたら活動開始時の目安になります。活動を開始するまでは餌を食べないのでゼリーを入れる必要はありません。

 

この時期はデリケートなので、最低でも羽化して1カ月はなるべく手で去ったり、刺激を与えないようにします。大切なのは不必要な振動や衝撃を与えないことと、湿度を高めに保つことです。特に羽化直後は乾燥に非常に弱いので、マットが乾いてきたら霧吹きで加湿してあげます。

 

羽化して2カ月ほど経過すると、ケースの中を徘徊するようになり、餌を食べるようになります。ゼリーを食べるようになってきた後は、先に紹介している成虫の飼育方法と同じように管理しても大丈夫です。

 

オオクワガタを越冬させる方法

オオクワガタは秋になって気温が下がってくると活動が低下してきます。オオクワガタは寿命が長いので野外で暮らしている時に寒くなると冬眠します。飼育下でも冬眠できるような環境を整えてあげる必要があります。

 

最低気温が15℃あたりになってきたら、越冬させる準備が必要となります。

オオクワガタを越冬させる方法は今年の秋ごろに別の記事で紹介する予定です。

 

 

以上、私が日ごろオオクワガタの飼育で行っていること、考えていることをとりとめもなく書いてみました。少しでも参考になることがあったなら幸いです。

 

※画像は綺麗な物が撮影でき次第掲載します。

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